新潟の洋上風力協議が前進 漁業影響調査のあり方で合意

    新潟県村上、胎内両市沖で洋上風力発電を開発するために設置された協議会の議論が大きく前進している。洋上風力の漁業への影響調査のあり方について、地元の漁業関係者が合意。今後、洋上風力の売電収入の一部を拠出して基金を設け地域の振興に役立てる議論なども始まる。一連の課題をクリアすれば、国による開発事業者の選定などが始まり、開発は大きく動き出すことになる。

    沖合で洋上風力発電事業が計画される新潟県胎内市の海岸(県洋上風力発電導入研究会村上市・胎内市沖地域部会の資料より)
    沖合で洋上風力発電事業が計画される新潟県胎内市の海岸(県洋上風力発電導入研究会村上市・胎内市沖地域部会の資料より)

    国は昨年9月、再エネ海域利用法に基づき、村上、胎内両市の海岸から約6キロ沖合までの海域(約96平方キロ)を洋上風力開発の有望区域に指定した。この海域に出力9・5~16メガワットクラスの洋上風力発電機を28~60基設置することが想定されている。

    国は同法に基づき、この海域を利用する漁業関係者や船舶、資源事業者、地元自治体などによる協議会を設置し協議が進められている。洋上風力では、漁業に支障がないと見込まれることが開発の前提条件となるため、特に漁業者の理解を得ることが重要となる。

    風車稼働音と電磁界

    1回目の協議会は今年1月に開かれ、地元の漁業関係者から洋上風力の開発による漁業への影響を心配する声が寄せられた。これを受けた2回目の協議会は3月に開かれ、専門家から洋上風力の漁業への影響に関する国内外での研究・調査事例が紹介された。

    海洋生物環境研究所中央研究所の主幹研究員、三浦雅大氏は「洋上風力で懸念されるのは、建設時や稼働時の水中音と送電ケーブルの周りで発生する電磁界」と指摘した。

    村上、胎内両市はサケが特産品になっていることから、風車の稼働音をサケに聞かせる実験を紹介。三浦氏は「水中のサケが風車稼働音を聞くことができる範囲は風車基部から6メートルの距離と予想される。洋上風力では風車の間隔は数百メートル~1キロほど離れており、風車の稼働で魚がいなくなった例はないようだ」とした。

    英国では洋上風力の建設前後でサケの成魚と稚魚の漁獲量を比較する調査をしたが「影響は確認されなかった」という。協議会では建設工事の時期について、サケの遡上(そじょう)や稚魚放流の時期を外すなど配慮することが必要との意見が出た。

    また、サケは地球の自然磁場を利用して回遊するため、送電ケーブル周辺に発生する電磁界が影響する恐れもある。宮下和士・北海道大教授からは「村上、胎内両市沖の海域は浅い砂浜なので、送電ケーブルを海底に埋設する必要がある」との意見が出された。


    Recommend

    Biz Plus

    Recommend

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)

    求人情報サイト Biz x Job(ビズジョブ)