(中)益子・三菱自会長「いずれこのような道と考えていた」

日産・三菱自の会見詳報
会見する三菱自動車の益子修会長=12日、横浜市(大西正純撮影)

 《記者の質問がスタート。150人以上も集まった記者から挙手が相次ぐ》

 --三菱自の燃費不正が拡大する可能性があるが、なぜこのタイミングで提携するか

 ゴーン社長「三菱自とは5年間にわたるパートナーシップ築いてきた。益子会長とはオープンに対話しており、今回の状況も益子会長自身がごらんになったことを説明いただいているので、問題の規模については理解している。三菱自のトップが問題を分析し、それを共有しているので、当社としては三菱自の会社としての潜在力を信じている」

 「三菱自は日産が筆頭株主になり、三菱自を支援してウィンウィンの関係が築ける。日産には直接的な相乗効果が期待できる。三菱自は、一部の地域の業績は日産を上回る。顕著なのが東南アジアで、スポーツ多目的車(SUV)やピックアップトラックは素晴らしい。(協業すれば)日産がじかに利益を享受できる。(燃費データ不正問題で揺れる)三菱自の不安は理解できるので、必要な時に手を貸すして問題を解消し、不安を払拭(ふっしょく)することを考慮した。トップレベルの信頼関係があったからこそ提携した」

 --三菱自には三菱グループの支援を得る選択肢もあったが、日産を選んだ理由は

 益子会長「日産とは平成23年に軽自動車の共同開発会社をつくり、一緒に仕事をしてきて信頼関係が築けている。ゴーン社長ともフランクにいろいろ話ができ、トップ同士の信頼もある。軽自動車以外の提携も話をしてきた。燃費(データ不正)の問題で早まったが、いずれこのような道になると考えていた。自動車業界の大幅で急速な環境変化に1社で取り組むのは難しい」

 《益子会長の表情は、冒頭に比べて少し明るくなった》

 益子会長「三菱グループの3社(三菱重工業、三菱商事、三菱東京UFJ銀行)には20%以上の株を持ってもらい、人的支援を続けてもらう。持ち株のトップシェアは日産になり、日産と三菱グループに支えてもらう構図は変わらない。日産からは、開発部門は人をいただく予定で、(開発部門の風土などを)大きく変えるきっかけがつくれるのではないかと期待している」

 --提携の経緯は

 ゴーン社長「日産と三菱自は軽自動車以外でも関係強化に取り組んできた。急いでいたわけではないが、三菱自に突如危機的状況が発生したため、お互いのメリットを検討して、短期間で合意を形成した。早まった感はあるが、継続的な協議の延長線上だ。例えば、プラットフォーム(車台)の開発には1つで5億ドルくらいかかるが、1つの車台を2社で使えば、開発は1回で済む。これらは電気自動車(EV)や自動運転システムの開発などでも言えることだ。日産にはルノーとの提携で2つのブランドを自主的な経営で成長させてきた実績がある。三菱自も提携後はブランドは維持しつつ、必要な改革を行い問題を克服していく」

 《大きな身ぶりを交えながら語るゴーン社長。説明にも力が入る》

 --出資比率を34%にした理由は

 ゴーン社長「ダイムラーのツェッツェ会長に以前『なぜ日産とルノーはうまくいってダイムラーはうまくいかないのか』と聞いた記者がいた。ツェッツェ会長はまず提携し、その後何を協力できるか検討する手法だ。われわれはその逆でまず、何を協業できるかを検討する。三菱自の取締役会長は日産が推薦する人間になるが、支配するのではなく、パートナーシップをまとめて力を合わせる。この手法が日産とルノーが17年間の提携に基づいた提携だ」