(下)燃費不正問題は「三菱自の経営者が責任持つ」 ゴーン氏は両社の線引き強調
日産・三菱自の会見詳報《質問は続く。益子会長は前日(11日)の不祥事会見とはうってかわり、経営者の顔になっている》
--日産が株式取得することに国、経済産業省からの要請があったのか
益子会長「国から要請があったとか公的機関からの指示はない。両社で将来の成長戦略を考えた」
--これまでの発表によると、軽の製造販売は三菱自がやっていて、日産に責任ないということだが、共同でやっているので日産にもその責任の一端はあるとの見方がある
益子会長「私どもが開発の責任を負っていたので、日産に責任があるとの認識を持っていない。責任の一端ということで資本提携に至ったことはない」
--三菱自のディーラーは疲弊している。それをサポートしていくのか、三菱自のディーラーが日産に切り替えることは将来あるのか
益子会長「ブランド別で販売網別なので、三菱ディーラーは三菱自が責任持って面倒をみていく。日産販売店に店舗を変えることは考えていない。できるだけ早く正常に戻して健全にできるようにしたい」
ゴーン社長「混乱はない。日産は日産、三菱自は三菱自のまま。あくまで日産は株主として支援する。2社の責任範囲は線引きしていく。三菱自の経営者に責任持ってやってもらいたい。過去にも混乱はないし、今後もそうだ」
--提携協議はいつから始まり、どちらが持ちかけたのか
益子会長「11(平成23)年に軽自動車をどうするかというとき、3つ選択があった。規模からいって単独開発は難しい。撤退か、OEM(相手先ブランドによる供給)でもらうか、パートナーがいれば開発を続けるのか。そこで日産と共同で軽自動車については三菱自が開発、生産することが決まった。11年が非常に大きなきっかけになった」
「その後、ほかの協業も可能性あるかというので、いろんなアイテムで検討してきた。タイ工場で日産のピックアップを一時生産したこともある。いろいろ関係を考える中で自然といつかは資本提携は考えられるんだろうなと、ゴーンさんと話してきて、自然な流れの中で今日を迎えている。燃費(データ不正)問題で早まったが、突然起きたのではなく、自然の中で提携が決まった」
《多少意地悪な質問を投げる。ゴーン社長は少し語気を荒げて否定した》
--日産は、燃費不正の問題があるなか、いつから話をしたのか。いずれ提携に発展すると想定していたか
ゴーン社長「予想したか。それはないでしょう。状況を把握し、益子さんとの話で実現に至った。今回の事象で加速された感があるが、これまでも検討してきた。10、15年後をみていくと、車業界の展望、技術、排出削減、地理的問題を考えると、規模の小さいメーカーは同じことを考える。複数のEV、PHV、エンジンなどラインアップをいくつも出さないといけない。小規模メーカーは単独では全部できないという話になる」
--日産にとって東南アジアは補完できる。主力の北米についてはどう考えている
益子会長「三菱自にとっては北米が弱い。協業の具体的なアイテムは詰めていくが、商品ラインアップは十分でないので、商品ラインアップの強化が図れる。三菱自は先進国に工場がない。今後、日産との協業の可能性もある。中国、ロシアでも、キャパ(生産能力)の余剰問題を解決できる。詳細はこれから詰める」
--日産と三菱自は地域ですみ分けを図るのか
ゴーン社長「今後の進め方は、まず日産が三菱自に対し、22億ドル(2370億円)出資する。三菱自とは、十分なシナジー(相乗効果)で、投資のしがいがある。まだまだ可能性がある。デューデリ(デューデリジェンス。資産査定)は楽観視している。例えば、米州の協業、南米も含め、潜在力は三菱自はある」
--今後の資本提携に向けたスケジュールは。短期的には軽自動車の生産・販売が止まっているが、日産が支援することはないのか
益子会長「資金は、4500億のキャッシュ(現金)がある。資金不足が生じることはない。時間軸でいえば、デューデリは、独禁法の問題もあるので、年内めどが時間軸ではないか」
ゴーン社長「デューデリ前に大規模に物事を始めることはない。時間をかけて準備を進める。どういった相乗効果、ガバナンス(企業統治)ができるのか。準備を進め、態勢を整える」
《席を立ち、写真撮影に臨む。ゴーン社長、益子会長とも笑顔だった》
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