「安堵」「困惑」…三菱グループに広がる複雑な思い

三菱自動車・日産傘下へ
資本提携することをうけての共同記者会見に臨む日産自動車のカルロス・ゴーン社長(右)と、三菱自動車の益子修会長=12日午後、横浜市(大西史朗撮影)

 三菱自動車が日産自動車の傘下で再建を目指すことについて、三菱グループ各社には「安(あん)堵(ど)」や「困惑」など複雑な感情が広がっている。「金銭的支援は免れる」という声が上がる一方、グループ外の日産が影響力を強めることに対し、今後の取引縮小を懸念する声も聞かれた。各社の温度差が大きくなれば、世界最大の名門企業グループの結束力に影を落としそうだ。

 「寝耳に水だ。13日の金曜会(三菱グループの親睦会)で三菱自から不正の説明があるとは聞いていたのだが…」

 グループ主力企業の幹部は絶句した。

 三菱グループの金曜会は「御三家」と呼ばれる主力3社(三菱重工業、三菱商事、三菱東京UFJ銀行)を中心に29社で組織し、強い結束力を誇る。平成16~17年の三菱自の経営危機では、御三家を中心に優先株の引き受けや人材の派遣など総力を挙げて支援し、三菱自は窮地を脱した。

 しかし、28年3月期は三菱商事が資源安の影響で創業以来初の最終赤字に陥り、三菱重工も大型客船事業の損失で大幅な減益を余儀なくされた。三菱東京UFJ銀もマイナス金利による利ざや縮小にあえぐ中、三菱自への支援については慎重な声が目立っていた。

 このため、日産主導の再建に歓迎ムードが広がり、三菱重工は「基本的に良い方向」、三菱東京UFJ銀も「前向きにとらえている」とコメントした。

 また、三菱自向け投融資残高が3350億円(3月末)と多く、アジア市場での販路開拓や新工場建設などを支援してきた三菱商事は「再建策を歓迎している」とコメントした。

 ただ三菱自と業務上の結びつきが強い企業からは日産主導の再建を不安視する声もある。ある幹部は「日産の世界戦略の中で、当社がどこまで三菱自の経営に参画できるのか」と懸念する。名門企業グループの結束力が改めて問われる。