楽天やDeNA、進む球場“ボールパーク化” 独特の“経営ノウハウ”生かす
スポーツi.日本の野球場の“ボールパーク化”が進んでいる。3日には東北楽天イーグルスの本拠地、コボスタ宮城が大きく衣替えした。左中間後方にある公園内に大観覧車が完成。最高到達地点は地上から36メートル、グラウンド内のみならず、仙台市内の街並みも一望できる。
「世界初」のゴンドラ
以前、大リーグのデトロイト・タイガースの本拠地、コメリカ・パークを訪ねたことがある。球場に隣接する小型のゴンドラからは球場内は見えなかった。プロ野球観戦ができるゴンドラは“世界初”だろう。
大観覧車がある区域は「スマイルグリコパーク」という名前が付けられ、約4000平方メートルの敷地は全面に人工芝が張られている。野球の観戦チケットがあれば利用でき、パークだけでも入場OK(大人500円、子供300円)だ。子供向けの遊具などもあり、家族連れで楽しむことができる。
それにしても、コボスタ宮城の変貌ぶりには驚かされる。
今年の開幕戦に行った。内外野のフェアグラウンド部分がすべて天然芝に張り替えられ、センター後方にある巨大なスコアボードも全面LED化された。観客席の種類も増え、球場内のフードコートも多種多様になった。見た目も洗練されて、実に美しいのである。
楽天が球界参入したのは2005年。あれから12年…。リノベーションされ、隣接する公園まで一体化された大リーグの“ボールパーク”になった。
変貌の裏には独特の“経営ノウハウ”があった。
1950年に建てられた球場は老朽化が激しかったが、楽天は球団を持つとすぐさま球場の改修に乗り出した。本来、改修は所有者である宮城県の仕事であるが、楽天は全額負担する代わりに、球場使用権に加え営業権まで手にした。そして年間5000万円を県に支払うことで合意したという。
70年代の中盤、ロッテが本拠地として使っていた時期がある。所有者である県に陳情しても、なかなか改修には至らなかった。営利の一企業に税金を投入することになるからで、行政が動きにくい環境があった。ロッテはわずか5年間で去った。
朽ち果てる?かのような球場だったが、楽天の参入で好転した。東北唯一のプロ野球球団の所在地として仙台の名は高まり、球場は仙台の新たなランドマークへと変身、県は税金を投入せず使用料が入る。お互いが“WINWIN関係”を作ったのだ。
初年度から黒字化させ、観客動員は昨年球団新の152万人超を記録した。野球以外でも常に球場を意識させるボールパーク作戦が功を奏した。
一体経営で迅速決断
実は、こんな新たな事業モデルの導入に積極的な球団も増えている。
球団創設5年目を迎えたDeNAが今年1月、横浜スタジアムの友好的TOB(株式公開買い付け)に成功。買収に約74億円を投じた。球場使用料として入場料収入の13%を支払っていたが、球団・球場一体型経営によって大きく黒字転換できる方向になった。DeNA池田純球団社長は、僚紙サンケイスポーツ(3月29日付)のインタビューでこう答えていた。
「参入前と比べて売り上げは約50億円から93億円と倍近く増えた。赤字は28億円から3億円へと黒字化目前まで改善した。いま球場の業績を単純に合算すると約4億円の黒字になる」
以前から大リーグ流のボールパーク構想を持っていたDeNA。参入と同時にMLBを中心に70以上のスタジアムを視察している。今回の買収で「迅速かつ大胆な改修が実現できる」。れんが造りのビルを併設、右中間フェンスを低くすることで横浜の街並みを取り込むなど、夢スタジアムの構想は広がる。
かつて球場は、野球だけを見せる場所だった。球団経営も放映権に頼るところが大きかったが、いまや地上波から野球は消えた。旧態依然とした経営では立ち行かなくなっている。
ソフトバンクも12年、870億円の巨費を投じたヤフオクドーム買収で球場・球団一体化経営を推進、野球観戦以外でも一年中楽しめるアミューズメント化への経営転換をした。広島、ロッテなども球場と連係してボールパーク化に熱心である。
いま、日本球界は“変わらなきゃ”を実践している。(産経新聞特別記者・清水満)
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