(1)持続可能な社会実現へ幅広い貢献を 菊地哲社長

CTCのCSR活動

 ■ITの可能性に挑む

 今や企業のCSR活動は大きく変化し、その範囲は拡大してきている。こうした中で、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、CSRの推進に向けたマテリアリティ(重要課題)を特定、KPI(業績評価指標)をもとに進捗(しんちょく)状況を評価していく。CSRへの考え方やマテリアリティ特定の意義などを、菊地哲社長に聞いた。

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 --CSRについてのお考えは

 「日本には古くからCSRという発想がありました。その土地でもうけた会社がお金を寄付して学校や建物をつくるなど地域に貢献していく。税金がない時代だったとはいえ、こういうことは当たり前だったようです。2003年が日本の『CSR元年』といわれていますが、もともとCSRの考え方は古くから日本に根づいていたわけです」

 --03年から比べて、近年、CSR活動の内容が変わってきています

 「企業の社会的責任というのは、まず利益を出して税金を払うこと、社員とその家族を守ること、そしてステークホルダーに対しての責任を全うすること。ただ、それだけではいけません。個人は、ルールを守り社会に貢献しながら生きています。会社は法人、法のもとでの『人』ですから、社会の中の一員として個人と同じようにルールを守り、社会のためにその役割を果たしていかなくてはいけません。世界中を見渡すとさまざまな課題が山積しています。一企業がそれらをすべて解決するのは無理ですが、われわれが貢献できることには積極的に取り組んでいきたいと思っています」

 ◆介護現場の負荷も軽減

 --IT企業が果たすCSRとは

 「今起きている目の前の社会貢献もあれば、もっと先を見据えた貢献もあります。例えば、日本では少子高齢化が進んでいますが、それによって起きる課題についてITを駆使して解決することが可能です。ITは人手不足を補い、より便利に、豊かな暮らしを支えることができます。現在、介護施設向けに、被介護者の排泄(はいせつ)のタイミングを予測して、介護職員によるトイレへの誘導を支援するシステムの検証を実施しています。快適な生活を支援し、人手不足で困っている介護現場の負荷も軽減できます」

 「当社の使命は、『明日を変えるITの可能性に挑み、夢のある豊かな社会の実現に貢献する』ことです。既にITは社会にとって不可欠なものになっていますが、IoTやAI、ロボットの活用など、今後さらに必要性が増してくることは間違いなく、当社も社会にとって必要不可欠な会社であり続けたいと思います」

 --CSRの推進に向けてマテリアリティを特定しましたが

 「会社として取り組むべき方向性を示したものです。『信頼できるITサービスの提供』『明日を変える人材の創出』『ITを通じた豊かで持続可能な社会の実現』の3つを軸に、それぞれに3項目、つまり全部で9項目を重要課題として特定しました。KPIを設定し、今年度からしっかり評価していきます。この中には、IT企業として当然守るべきものもありますが、持続可能な社会を実現するために力を入れていくこともあります。今年度、公共・広域事業グループを新設しました。地方銀行や大学、地方自治体との連携を深め地域社会に根差した事業活動で、地域経済に貢献したいと考えています」

 「環境負荷低減という点では、気象データの解析・予測システムなどのノウハウを生かし、風力発電や太陽光発電の適地選定や出力予測・制御などのサービスを提供し、再生可能エネルギーの導入促進を行っています。また、お客さまの省電力化の推進や、省エネルギー仕様の当社のデータセンターを活用いただくことで、環境負荷低減に貢献しています」

 ◆次世代のことを一番に

 --「明日を変える人材の創出」のポイントは

 「人材育成の強化と女性の活躍支援のほか、“働き方変革”の一環として、2年前に朝型勤務を導入しました。社員が公私にわたって充実した時間を過ごし、意欲的な働き方ができる環境をつくるために、2016年度には働く時間の選択ができる制度を導入しました。今後もより柔軟な働き方を可能にする制度をどんどん導入していきます。さらに、次代へつなぐ人材づくりとして、小学生を対象にしたプログラミング教室を開催し、子供たちとITとの出合いの場を提供しています。将来の人材育成を見据えた、こうした地道な活動も大事な社会貢献だと思っています」

 --ITを使ってお客さまのCSRにも貢献していますね

 「今、健康経営が注目されている中で、健康状態やストレスをITで管理して生活改善を行うサービスを提供しています。このサービスはお客さまのCSRにもつながっており、大変喜ばれています。私たちはつい目先のことだけを考えがちですが、常に持続可能な社会であるために、未来のことを考えて種をまいていくことが必要です。解決に時間がかかる困難な問題ほど、次世代のことを一番に考えていくべきだと思っています」

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 ■CTCグループのマテリアリティ(重要課題)

 CTCグループが注力すべきCSRの重要課題を整理し、3カテゴリー9項目を特定した

 (1)信頼できるITサービスの提供

 ・情報セキュリティの徹底

 ・品質向上

 ・コンプライアンス順守

 (2)明日を変える人材の創出

 ・人材開発・育成

 ・ダイバーシティ推進と働き方変革

 ・次代へつなぐ人材づくりへの貢献

 (3)ITを通じた豊かで持続可能な社会の実現

 ・少子高齢化への対応

 ・環境負荷低減

 ・地域経済への貢献

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【プロフィル】菊地哲

 きくち・さとし 1976年東大法卒。76年伊藤忠商事入社。マスカット事務所長(オマーン駐在)、常務執行役員、代表取締役常務取締役などを経て伊藤忠テクノソリューションズ代表取締役社長。63歳。秋田県出身。