東北電による東電との共同発電【拡大】
東電と東北電はこれまで、電力供給で支え合ってきた。東電は、東北電の電力供給管内である福島県と新潟県にそれぞれ原発を保有するが、その一部は東北電との共同開発で、負担額に応じた電力を東北電に供給している。逆に、東北電の女川原発や原町火力発電所からは、東電が負担額分の電力を得ている。
しかし、この協力関係が成り立っていたのも、電力供給義務と引き換えに、管内での料金回収が認められた地域独占体制が背景にあってこそだ。
2000年から始まった電力改革で、工場など企業向けの電力販売は他電力管内でも可能となった。ただ、東電と東北電の間で“越境”販売する実績は一件もない。
ある関係者は「互いの販売テリトリーには踏み込まないとの不文律が電力業界にはある。電力融通などで密接な関係にあった東電と東北電の間ではなおさらだ」と解説する。
慣習の“呪縛”なし
だが、原発事故と電力不足を受け、政府の電力システム改革専門委員会は今年7月、一般家庭も含めた電力の完全自由化を決めた。東電は中期計画の土台となる「再生への経営方針」で、これを「(経営再建の)前提とされていない事業環境の変化」と指摘。「自由化に対応し、国民・利用者のニーズに応えていく」として、家庭用料金の自由化に前向きの姿勢を示した。