大きな文字やアイコンが特徴の富士通の「らくらくスマホ」の操作画面【拡大】
「明確な差異化なしに勢いで海外に乗りだすと、大概が失敗していた。競争の激しい最上位機種ではなく、富士通が強みとする『らくらく』で差別化してニーズを開拓する」。携帯電話事業などを統括する大谷信雄執行役員常務は、自信をみせる。
2月下旬にスペイン・バルセロナで開かれた世界最大の携帯電話の国際見本市で、大谷氏の手応えは確信に変わった。富士通のブースを訪れた通信会社やメディアが、らくらくスマホに高い関心を示したからだ。
らくらくスマホは、仏大手通信会社のフランステレコムが仏国内で販売する。初心者向けのスマホに絞って提案したところ、関心を示した同社がパートナーに決まった。
富士通はスマホの海外展開を4年ほど前から模索していたが、壁は高かった。「防水技術を盛り込み、薄型化した主力機種を現地最大手の通信会社に何回も提案したが、海外実績も知名度もないブランドだけに価格の大幅な引き下げを求められた」(大谷氏)。コスト競争力が高くない状況で、原価割れを覚悟する選択は「それでは先がない」(同)と見送らざるを得なかった。