シンガポール塗料大手のウットラムグループが3月12日、日本ペイント(大阪市)に対する事実上の買収提案を白紙撤回し、国内2位の塗料メーカーを巡る買収劇はいったん決着した。緊急会見を開いた日本ペイントは「今後もパートナーシップを強化していく」(同社幹部)と信頼関係を強調したが、ウットラム側から買収提案の目的が示されていないことも明かした。ウットラムはなぜ買収を仕掛けようとしたのか。最後まで謎だらけの買収劇だった。
打診、取り下げともに唐突
幕引きは、ウットラムのゴー・ハップジン代表から直接、酒井健二社長に「争ってまで買収提案したくない」と取り下げの意思が伝えられたという。この白紙撤回と同様、買収提案もあまりに突然だった。
日本ペイントは今年1月21日、同社から株式公開買い付け(TOB)による買い増しで、議決権の45%の取得を目指す提案を受けたと発表。敵対的買収でなければ通常、両社間で事前協議の場を持つものだが、日本ペイントが打診を受けたのは「発表の数日前だった」(同社幹部)。