■使いやすさと逃げやすさも魅力
ソフトウエア・アズ・ア・サービス(SaaS、ソフトウエアをユーザーの端末で動作させずに、インターネット経由で利用するサービス形態)の流行はどの業界にも強い影響を与えているが、特に中規模の企業の技術投資のあり方を大きく変えている。
大企業にとってみれば、どんな技術でも、新しい技術を導入する費用はとにかく巨額になる。経済的な費用だけでなく、人的なコストも大きい。というのも、往々にして大企業は各部門が連携を持たない縦割り構造で、社員がそれぞれの立場や権益を守ることに固執しがちになるからだ。それが、どんなに企業の経営を非効率にしていたとしても、である。企業の規模が大きくなれば大きくなるほど、意思決定は中央集権的になるものだ。
対して中規模の企業は、中央集権的か否かにかかわらず、なによりも経済的費用に敏感だ。新しい技術の導入に時間がかかるとすれば、それはその企業にとって経済的なコミットメントが負担になるからである。財務的な負荷が低くなれば、中規模の企業はコストカットに貢献しそうな技術を積極的に試すようになる。SaaSは、そんな企業の強い味方だ。
◆消費者向け商品活用
今、多くの中規模ビジネスは従来の法人向けソフトウエアやサービスにまつわる経済的、および人的コストを回避するため、法人向けではなく個人消費者向けの製品に落ち着いている。
例えば、ウイルス対策ソフトの法人ライセンスを取得してそれにまつわるさまざまなコストに悩まされるよりも、技術管理者が近所の電気店に行って人気のウイルス対策ソフトを複数購入してしまうというわけだ。