金融機関や行政窓口など相談の受け皿はたくさんありそうだが、「多くの中小企業は相談の場がない」と中嶋さんはいう。銀行はあくまで債権者であり、お金を借りる立場の経営者は本音の話ができない。行政窓口では経営の経験がない人がほとんどだ。税理士や弁護士は敷居が高い。
中嶋さんは板橋区内のすべての金融機関の支店を回り、支店長や融資担当者の連絡先リストを作っている。銀行と話ができなければ、経営者を助けることは不可能だからだ。専門員のネットワークづくりも自前。相談に訪れた経営者を、時に厳しく叱咤(しった)し、時には酒も酌み交わす。たとえそれが愚痴だったとしても「経営者は孤独。話を聞くことが大切」と、中嶋さんは耳を傾ける。
倒産経験が糧
休日も返上して取り組む中嶋さんの活動の原点には、自らの苦い経験がある。2000年代初頭、父親の経営する水道工事会社が360億円の負債を抱えていた。再建を目指し引き継いだものの、かなわずに会社は倒産。会社だけでなく、自宅を競売にかけるなど私財をすべて整理し、自己破産した。