一方、興味深かったのは、一斤400~500円もする専門店の食パンが、何カ月待ちという人気になっているという事実だった。統計でも安売り品の需要は下落傾向なのに対し、高価格商品の需要は増加傾向なのがわかった。「ビジネスチャンスは価格よりも価値の追求にある」(同)。鈴木会長の指摘の正しさはマーケティングでも裏付けられた。
開発の方向性は固まった。ただ、実際に形にするまでは苦難の連続だった。まずは目標の品質を定めるが、人気の専門店の食パンはさまざま。食べ比べる中で、うまさは“甘み”という結論にたどりつく。
それも砂糖の甘みではなく、次々と食べたくなる素材そのものがもつ甘みをいかに引き出すかが重要と判断。「上質な小麦粉とパン生地の熟成にこだわることにした」(中村氏)。