「朝の3時から夜の12時までの手作業。緊張の日々の中、ビールが私にエールをくれました。酵母がぷくぷくと泡を出し始めました。そのときの感動は今でも忘れられません」
初出荷は1997年12月。「おいしいものを口にしたときの豊かさを味わってほしい」と願いを込めた。商品は淡色の「六甲ピルスナー」、褐色の「六甲IPA」、濃色の「六甲ポーター」のエール3種類で、いずれも1本330ミリリットルの瓶詰で480円(税抜き)。小売店やホテルなど向けに販売し、現在まで定番商品になっている。
ただ、当初はなかなか売れ行きが伸びず、辛うじて収益を確保する「低空飛行」の状況が続いた。
◆神戸・三宮に直営店
経営が転機を迎えたのは約6年前。神戸・三宮に直営レストランを開店した。神戸一の繁華街という立地ではあったが裏通りで手狭だったため、約3年後、JR元町駅前に規模を大きくして移転。昨年6月には神戸市役所前に新規出店を果たした。
この直営2店舗の出店で、出荷量はそれまでより約4割増えた。ビールの祭典「オクトーバーフェスト」などイベント参加も奏功。今年6月には生産設備を拡張して夏のビールシーズンを乗り切った。
心強い味方も現れた。長男の学さん(34)だ。昨年4月に父と同じように、勤めていた会社を辞め、六甲ビール醸造所の営業担当を買って出た。学さんは現在、東京のレストランやビアパブなどを中心に、積極的に六甲ビールを売り込んでいる。
中島社長は「味へのこだわりを忘れず、少しずつ生産を増やしていきたい」と語る。(牛島要平)
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【会社概要】六甲ビール醸造所
▽社名=アイエヌインターナショナル
▽本社=神戸市北区有野町有野351-1
▽設立=1989年9月
▽資本金=500万円
▽従業員数=6人
▽事業内容=地ビール製造・販売