ボーナスゼロにもかかわらず、社員は過酷な勤務を続ける九州電力の本社=福岡市中央区(安部光翁撮影)【拡大】
原発停止前に6500億円あった内部留保は、25年度中間決算で730億円にまで減った。自己資本に手をつけざるを得ない状況に陥るのは時間の問題となっている。
とてもではないが、妻や子に「九電は大丈夫だ。安心しろ」と言えない。ある九電社員は「ボーナスゼロ以上にそれが一番辛い」と語った。
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どんなに赤字に陥ろうと電力は止められない。不測の事態で大停電を招けば、あらゆる企業は大打撃を受ける。病院や介護施設の機能が麻痺すれば、何人の命を奪うことになるか分からないからだ。
九電社員には、この精神的苦痛の方が、経済的な苦しみよりよほど大きい。
しかも今夏は各地で35度以上の日が続く記録的な猛暑に見舞われた。
原発が動かない以上、電力需要増は火力発電所のフル稼働で補うしかない。九電は震災特例で認められた定期検査の延期を重ね、それでも足らない時は他社からの電力融通でしのいだ。ピーク時の電力融通は120万キロワット。9月まで関西電力大飯原発が稼働しており、他社に融通できる余力があったことに救われた。
そんな中、火力発電所では些細(ささい)なトラブルも許されない。この夏は幹部社員もボイラーやタービンのパトロールに加わった。タービン建屋内の気温は50度に達する。社員らは頭から水をかぶったように汗だくになりながら24時間態勢で点検作業を続けた。
それでも巨大プラントでの「トラブルゼロ」は不可能に近い。
8月2日には、石炭火力の松浦発電所1号機(長崎県松浦市、出力70万キロワット)がボイラートラブルで停止し、電力使用率は事前予想の89%から94%に跳ね上がった。懸命の努力で8月19日に運転再開にこぎつけたが、この日の電力使用率は「厳しい需給状況」となる97%に達した。