ボーナスゼロにもかかわらず、社員は過酷な勤務を続ける九州電力の本社=福岡市中央区(安部光翁撮影)【拡大】
もし運転停止したままだったらどうなっていたか。少なくとも「原発がなくても夏を乗り切ったじゃないか」という脱原発派の主張は現実と乖離(かいり)している。
ある火力発電所幹部はこう打ち明けた。
「帰宅しても携帯電話が鳴る度に緊張しましてね。何かトラブルがあったんじゃないかと思って。夏場は肉体的にも辛かったけど、精神的にはもっと辛かったですよ…」
大変だったのは発電所の社員だけではない。4月以降の電気料金値上げで各地の営業所社員は、苦情対応に追われた。
「なぜ営業所に冷房を入れているのか? お前らが電気を一切使わないなら値上げをしてもいいぞ」「値上げした分の料金を払うつもりはない」-。どんな理不尽な苦情にも、社員はひたすら頭を下げ続けた。
繰り返すが、九電が原発事故を起こしたわけでもなく、社会的制裁を受けるべき瑕疵(かし)があったわけでもない。民主党政権の原発政策のブレに翻弄されたあげく、企業存亡の危機に瀕し、社員らは苦しんでいる。関連会社を含めれば、九州経済界に及ぼした悪影響は計り知れない。
新小倉発電所の別の男性技師(45)は、高さ50メートルのボイラープラントの上に立ち、北九州市の夜景を見つめながら言った。
「原発事故の前も後も私たちの使命は何も変わりません。ただ、この街の明かりを一瞬たりとも絶やさず灯し続けることなんです」
(敬称略)