【九州の礎を築いた群像 JR九州編(1)】「ななつ星in九州」前編 「鉄道そのものが観光になるんだ」唐池社長、四半世紀の夢 (4/5ページ)

2014.1.6 14:32

初公開された「ななつ星in九州」の車両前で記者会見に応じる水戸岡鋭治氏(左)と唐池恒二氏。2人の思いが結実した=平成24年9月13日、小倉総合車両センター(安部光翁撮影)

初公開された「ななつ星in九州」の車両前で記者会見に応じる水戸岡鋭治氏(左)と唐池恒二氏。2人の思いが結実した=平成24年9月13日、小倉総合車両センター(安部光翁撮影)【拡大】

 水戸岡が最初のデッサンを持ち込んだ直後。唐池は、営業部販売1課副課長の仲義雄(38)=現クルーズトレイン本部次長=を社長室に呼び出した。

 「九州一周の豪華寝台列車を作る。先頭に立ってやってくれ!」

 当時の社内は平成23年3月の九州新幹線全線開業を控え、多忙を極めていた。九州新幹線こそが、JR九州の悲願であり、社運をかけた大プロジェクトだったからだ。

 仲もオープニングセレモニーを担当しており、休日返上の日々が続いていた。「豪華寝台列車ってブルートレインのことか? この忙しい最中に、一体何を言い出すんだ…」。仲には唐池の思いが理解できなかった。おそらく社内全体がそんな思いだったに違いない。ただ一人唐池を除いて…。

  ×  ×  ×

 だが、唐池は社内の冷ややかな空気など気にも留めず、豪華寝台列車の実現に邁進(まいしん)した。

 平成22年5月、唐池は、運輸部長の古宮洋二(51)=現取締役総務部長=とともに韓国に渡った。韓国鉄道公社が運行する豪華寝台列車「ヘラン(太陽)号」に乗るためだった。

 「客船タイタニックのような豪華クルーズを鉄道で楽しめる」という触れ込みで2008年11月に導入されたヘラン号は、客室にベッドやトイレ、テレビが備えられ、豪華な食堂車や展望車も連結している。ソウルを起点に、1泊2日~2泊3日で韓国全土を巡り、車内では乗務員によるフルート演奏やマジックショーも催される。

 唐池がヘラン号に乗ったのは、そのノウハウを学ぶためだけではなかった。

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