【USJ解剖(上)】
4月18日、大小の尖塔(せんとう)がそびえる欧風の荘厳な城がライトアップされ、夜の闇に浮かび上がった。米映画テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ、大阪市此花区)。人気映画「ハリー・ポッター」の新エリアの一端がその姿を現したのだ。
「7月15日、オープン」。城を前に、安倍晋三首相の口から開業日が発表されると、招待客ら約700人が歓声を上げた。民間企業のイベントに首相が訪れるのは異例。キャロライン・ケネディ駐日米大使も駆けつけ、「世界のUSJ」を印象づけた。
傍らで感慨深げに眺める一人の男。USJの運営会社ユー・エス・ジェイのマーケティング本部長で、新エリア導入を進めた森岡毅執行役員だ。「ようやく始まった」。潤んだ瞳はすでに先を見つめていた。
森岡氏は、ユー・エス・ジェイのグレン・ガンペル社長が平成22年、米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)から引き抜いた。USJは、ハリウッドの常識をそのまま持ち込み、大阪府の許可量を超える火薬を使うなど数々の不祥事やアトラクションの陳腐化で来場者数が低迷していた。ガンペル氏は反攻に転じる上で、P&G時代に多くのヘアケア商品をヒットに導いたマーケティングの手腕に期待した。