新時代の幕開け、次世代を担う「燃料電池車」 トヨタ開発責任者・田中義和氏に聞く(1) (4/4ページ)

2014.8.11 07:00

大きなサイドグリルが印象的な、トヨタの燃料電池自動車=愛知県豊田市

大きなサイドグリルが印象的な、トヨタの燃料電池自動車=愛知県豊田市【拡大】

  • トヨタの燃料電池自動車=愛知県豊田市
  • 「トヨタFCV」と開発責任者の田中義和氏=愛知県豊田市
  • 「トヨタFCV」のリアコンビネーションランプ=愛知県豊田市
  • トヨタの燃料電池自動車(FCV)開発責任者、田中義和氏=愛知県豊田市

過去に誰もやっていないことを、基準を作るところからやってきた

 --前例のない水素を使うクルマの開発に取り組んだ田中氏が、量産化にこぎつけるまでの苦労を明かしてくれた。

 「まず大変だったのが、燃料電池本体をどうクルマに積むかです。開発陣が頑張って小型化してくれましたが、実は前席の下にスタック(燃料電池)を積んでいて、後席の下と後ろに水素タンクを積んでいます。低重心を目指して下に積んだのと、FF式(フロント駆動)なので前後の質量配分をフロントヘビー(前輪荷重が後輪荷重より重い状態)になり過ぎないように、中心以降に物を積むことでミッドシップ(エンジンが前後の車軸の間にあること)のような乗り味を実現できました」

 「そこに載せるに当たっては、ミリ単位で小さく調整をするとともに、搭載時もミリ単位で配置します。さらには安全の確保も大事。当然、スタックやタンクを守るということにおいては、衝突安全などにフル適合させなくてはいけません。そこの部分は本当に新しい技術です。特に『水素漏れ』などの技術は今までの工面にはないこと。高電圧安全の観点はEVやPHVやハイブリッド車には当然ありますが、水素漏れを含めた要素は他のクルマにはありません。過去に例のない安全テストもやらなくてはいけないし、いろんな基準も作らなくてはいけません」

 「トヨタ車を安心して、自信を持ってお客様に届けるために、過去に人がやったことのないことを、自分たちで考えながら、基準を作るところからやってきました。金に糸目をつけずに作るのは簡単かもしれないですが、クルマは普及してなんぼ。信頼性、品質面を含めた安心感を追求し、それを含めて量産化してお客様に届ける。それはイコール、お金的にも成立させなければいけません。FCVのユニットは1992年から開発を続けていますので、開発者の23年間の集大成として信頼性、性能面、コスト面で折り合いがつく形でパズルのように積み上げてきました」

=(2)燃料電池車「700万円はまだ高い」へ続く

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