今後の物価景気回復見通し【拡大】
8月の全国消費者物価指数は、緩やかな物価上昇が続いた。ただ、働き手の給与が物価上昇に見合うだけ増えなければ、消費を冷え込ませ景気を下押ししかねない。国税庁の調査では平成25年の民間の年間給与は1・4%増にとどまり、今年8月の物価指数上昇率を下回っている。景気の好循環を維持するうえで、企業の賃上げの動きが一段と重みを増している。
8月の指数上昇率は3・1%のプラス。前月から伸び幅が0・2ポイント縮小したとはいえ、高水準が続く。
政府・日銀が描く「景気の好循環」のシナリオは、所得増が消費を促し、活発な消費が企業の生産拡大につながるというものだ。物価上昇のペースに賃上げが追いつかなければ、好循環が途切れてしまう。
25年の年間給与は3年ぶりに増え、政府の経済政策「アベノミクス」効果が表れた格好だが、給与の前年比伸び率は1・4%増で、非正規雇用者だけみれば、マイナス0・1%と逆に減少している。
一方、このところの円安進行で輸入物価が上昇し、「年末以降、再び物価上昇率のプラス幅が拡大する」(明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミスト)観測も出ている。輸入コストの増加は、大企業に比べ経営体力が劣る中小企業を直撃する恐れがある。物価上昇が、景気改善をともなわず、コスト増を主因とする「悪いインフレ」に転じれば、景気の好循環の維持には逆風だ。