「清水の舞台から飛び降りる覚悟で、今年はベア要求を受け入れた。もう一度、飛び降りろというのか」。ある製造業の幹部はこう嘆く。社員の賃金水準を底上げするベアは、固定的な人件費を増やすことになる。2年連続となれば同じ率でも必要な金額は増えるわけで、「業績好調の企業でも2年連続のベアは相当厳しい」(財界関係者)。
春闘の構図は今年、劇的に変わった。昨年9月に政府と労使の代表らを集めた政労使会議が始まり、デフレからの脱却による「経済再生」を最大テーマに掲げる政府が企業に異例の賃上げを要請した。
経営環境や収益実績に即して労使が議論し、支払い能力に基づいて賃金を決めていた従来の春闘に、今年は「社会的な意義」「社会的責任」が加わり、それらがクローズアップされた。集中回答日の前日には甘利明経済再生担当相が「業績が改善したのに何もしない企業は非協力的だ」と発言したほどだ。
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」効果による円安・株高で、業績が好転しつつあったこともあり、企業側も政府の要請に応える形で相次ぎベア実施を決定。経団連が6月末にまとめた大手企業の賃上げ妥結額(組合員平均)は月額7370円で、10年以来となる7千円超えを実現した。