開発に動き出すまで、かなりの時間がかかったが、一度やると決まったら「両社の良い所を融合して日本で一番おいしい炊飯器を作ろうという流れになった」(加古さん)。そこで、開発チームが新製品で目指したのは、誰が食べてもおいしいと感じるかまどで炊いたご飯だ。
「はじめチョロチョロ、なかパッパ」と呼ばれるかまどは、強い火力が重要なポイントになる。そこで開発チームは、釜の底面からの強力な熱対流でコメを踊らせ、一粒一粒を加熱するパナソニックの高速交互対流技術と、圧力で甘みやモチモチ感を出す三洋の可変圧力技術を融合した「Wおどり炊き」を新製品の目玉にした。さらに、コメのうまみを閉じ込める200度の高温スチームを搭載し、かまどにはできない加熱を行い、パナソニック史上最高傑作の炊飯器を目指した。
◇
だが、実際に開発に着手してみると、自分たちが思うようになかなか進まなかった。北木宏炊飯器設計チーム主任技師は「スチームと圧力装置を一緒にするのが最大の課題だった」と振り返る。両方を盛り込むと炊飯器の蓋が厚くなり、安全性の課題などが出てきた。
IH式にこだわってきたパナソニックは、Wおどり炊きで初めて圧力式を扱った。このため「最初は炊飯器から蒸気が漏れてしまい、爆発することも度々あった」(北木さん)。開発当初は部屋に囲いを作り、蓋をネジで締め、ストップウオッチを手に持ちながら、コメを炊くレベルだった。
また、圧力とスチームの両方をかけることで、ソフトプログラムも合わないところが多く発生した。そうした中で、頼りになったのが三洋出身の開発者たちだった。圧力式のノウハウを多く持ち、負荷のかけ方などをアドバイスしてもらいながら、試行錯誤の状態で開発を進めた。