さらに、開発チームを苦しめたのが評価テストだ。パナソニックは1つの炊飯器を作るのに200~300の評価項目がある。その中で一つでもおかしいものがあれば、振り出しに戻らざるを得なかった。安全性の証明が何よりも重要となるため、根気よく、一つずつクリアしていった。
その結果、構想から3年以上をかけて、ようやく、Wおどり炊きの炊飯器が完成した。通常の炊飯器の開発は1年程度に比べて、かなりの期間を費やした。
製品化のめどが立ち、開発チームは喜んだが、一方で不安もあったという。食味が違い、モチモチしたご飯の炊飯器はパナソニックの利用者には初めてとなる。古くからの利用者に受け入れられるのか、現場はハラハラしていた。だが、蓋を開けてみると、9割以上が満足という調査結果が出た。不満の人は3%未満で、従来機種よりも少ない数字となった。
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その結果を見て、「片意地を張らず、時代に応じて変わらないといけないと反省した」(加古さん)という。Wおどり炊き機能を搭載した炊飯器は、10万円前後するにもかかわらず、消費者から好評で同社のヒット商品となった。
三洋電機がパナソニックの子会社となってから5年。事業売却ばかりが目立ち、両社の技術を融合した画期的な新製品は少ない。そうした中で、プライドを捨ててお互いの良い部分を組み合わせて開発したWおどり炊きを搭載した炊飯器は、成功事例の一つとなった。
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