佐治は新浪を「社外で最も『やってみなはれ』の精神、わが社のDNAを持った人」だと評す。創業家からの後任という慣例を破ってでも手に入れたかったのは、佐治自身と価値観を共有し、社長とはいえサントリーという大店を任せられる新しい時代の「番頭」=「BANTOU」だ。
「あしき官僚化が進み、やんちゃな社員が少なくなった」
佐治は、サントリーが陥った“大企業病”への危機感をあらわにする。かつてはウーロン茶を国民的な飲料へとヒットさせ、焼酎事業にも参入するなど、型破りな独創性で多角化を進めた。だが、最近は商品開発で他社の後塵(こうじん)を拝する事案が目立つ。
現状を打破し、「やんちゃ」な企業風土を取り戻すには、今も14年前のやんちゃな心意気を失わない、物言う番頭の力が必要だった。佐治は「新しい風を吹き込んでほしい」と語る。
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10月1日、東京・台場のサントリーHD東京本社。大柄な体をグレーのスーツに包んだ新浪は、トレードマークの日焼けした顔から真っ白な歯をのぞかせ、第一声を放った。
「やってみなはれ」
横浜生まれの新浪に関西弁は似合わないが、失敗を恐れず、挑戦心を促すこの言葉はお気に入りだ。新浪は「『やってみなはれ』のスピリットで、ともに挑戦していこう」と力強く訴えかけた。その姿は社内ネットで再生され、社員に改革への第一歩を印象づけた。