イエロの買収対象は韓国国内のスタートアップにとどまらない。すでにインドネシアの企業が加わっており、東南アジアや日本を含め、アジア全土を見据えている。少しユニークなのは、イエロがスタートアップの株を買う、つまり創業者に技術とチームの充実のための資金を渡すのではなく、株式交換によって買収を実現しているところだ。個々のスタートアップの創業者はイエロの持ち分を得るため長期的に経営に関わりやすく、イエロは自らの手法をM&A(企業の合併・買収)というよりはアライアンス(連携、同盟)だと説明する。
このアプローチを採ることで、イエロは資金をより自由に、重点的に使うことができる。傘下の企業を支える優秀な人材をそろえ、マーケティングにも資金を回せるということだ。他の巨大インキュベーターに対抗して良いスタートアップを仲間に入れるためには、これが必要になる。
スタートアップの創業者にしてみれば、「イエロ同盟」に加わる最大の動機はこうした人材、マーケティング、そして財政面のサポートだ。イエロは、長期的に見れば独立して経営を続けるよりも、より強く大きいイエロに参加したほうが良い結果につながると創業者を説得する。特にアジアでは、技術や製品の質が良くても新人起業家が資本に手が届きにくい現状があり、イエロに加わることによって信用が得られると考えれば大きな魅力だ。
傘下のスタートアップは互いの燃油タンクに給油をし合って、互いの成長を後押しする。買収交渉を始める前に、イエロは成長可能性が高い市場を特定し、その市場での複数のトッププレーヤーにイエロ同盟に加わらないかと声をかける。