一般向け水素ステーションは、LPガス最大手の岩谷産業が昨年7月、兵庫県尼崎市に開設したのが皮切り。岩谷は4カ月後の昨年11月、水素の価格を1キロ当たり1100円(税別)で販売すると発表し、エネルギー業界関係者を驚かせた。同社の上羽尚登副社長は「採算は当初厳しいが、FCVの普及には最初から安めの価格設定を実現すべきだと判断した」と価格設定の根拠を説明した。
岩谷に対抗するかのように、石油元売り最大手のJX日鉱日石エネルギーは昨年12月、水素1キロ当たり1000円(同)で販売すると発表。これにあわてたのが東ガスだ。
東ガスは水素の価格は、MIRAIが実際に納車される来春までに決める方針だったが、「ライバルに後れを取ってしまう」(幹部)として、年明けの1月8日、1キロ当たり1100円(同)で販売すると発表した。岩谷は15年度に、水素ステーションを20カ所、JXも40カ所にまで増やす計画を掲げている。
エネルギー業界でここまで積極的な設置計画をかかげているのは、この2社に限られる。その大きな理由は、ガソリンスタンドの約5倍の5億円程度もかかる水素ステーションの建設コストにある。