自動車、電機の主要企業が高水準のベアで妥結した2015年春闘。背景には政府の強い意向があり、自動車では“模範回答”を示したトヨタ自動車が流れをつくった。一方で、横並びの回答が慣例の電機では、業績格差や先行きへの不安などから、交渉は難航した。
政府意向を前提
「日本全体で(経済の)好循環が回ってほしい。熟慮を重ねた結果だ」。トヨタの上田達郎常務役員(労務担当)は18日、こう説明した。
交渉当初から幹部が「前年(2700円)がスタートラインになる」と語るほど、経営側はベアに前向きだった。トヨタは今期、過去最高の営業利益を見込むなど業績は好調。日本最大の製造業の決断は他社や他産業に影響を与えることから、政府の意向に応える方向性で検討を進めた。
一方で、6000円という労働組合の要求に満額回答するわけにはいかない事情もあった。単純計算で労務費(一時金など含む)は年200億円増加。下請けの部品メーカーにとってはトヨタの妥結額が「天井」になるため、高額だと全体の水準を引き上げ、コスト増がグループの競争力を落としかねない。
増税後の物価上昇3%程度をカバーするには、昨年の回答額に1000円上乗せした3700円のベアでも定昇分と合わせれば足りる。ただ、「3000円台では中小企業のベアが高くなりにくい」(労組幹部)。4000円は、競争力を維持しつつ、高水準ベアの先導役となるための「落としどころ」だったといえる。