その佐野氏のもとで三洋は20年3月期連結決算で4年ぶりに最終損益を黒字に転換。監査法人が企業の存続可能性に重大が疑義があるときに記す「注記」も2年半ぶりに消し、経営再建に望みをつないでいた。
ところが、20年9月のリーマン・ショックが状況が一変。GSなどは利益を見込めるうちに三洋株を手放す意向を強め、海外を含めて売却先を探したが、最終的にはパナソニックが買収することに決まった。
正念場
その後、円高に加え、中国や韓国メーカーの台頭もあって三洋の電池事業などの競争力が低下。パナソニックは三洋買収に8千億円を投じたが、三洋の企業価値の低下に伴う損失だけで計5千億円にのぼるとされる。三洋への風当たりが強くなり、パナソニックと重複する冷蔵庫や洗濯機などの白物家電やデジカメなどの事業は海外企業などに相次ぎ売却され、人材流出も続いた。そして4月には残っていた三洋の全社員がパナソニックに転籍となる。直轄する最後の事業も月内に売却されると発表され、三洋は登記上の法人格を残すのみとなる。
シャープは今後、資本支援や抜本的な再建策などについて主力取引行と協議を本格化させるが、高橋社長がどこまで踏み込んだ中期経営計画を打ち出し、銀行からどのような条件で支援を取り付けるか。債務を振り返る優先株に議決権はつけない方向とみられ、三洋とは状況が異なる。ただ、主勅取引行の経営への影響力が強まるのは確実で、新中期経営計画の策定する5月までがシャープの命運を左右する正念場となる。