また、虎ノ門ヒルズは同制度により敷地内に広いスペースを確保し、土地を有効活用できた。現在、敷地面積全体の約3分の1に当たる部分で、地下に道路が走っている。道路に蓋をしてオープンスペースを広くとることで、街の活性化イベントの実施や、入居テナントとの合同防災訓練を行うことなども可能になった。
森ビルは建物を高層化して地上に空間を生み、人や緑に開放するという街づくりの手法「バーティカルガーデンシティー」(立体庭園都市)を提唱している。虎ノ門ヒルズは、まさにその象徴とも言える。
ただ、現在の形になるまでには全面的な設計変更などの紆余(うよ)曲折があった。森ビルは2002年から施工コンサルタント的な立場「事業協力者」、09年からは開発主体である「特定建築者」として事業に携わってきた。これまで森ビルが開発主体として関わってきた案件と違い、初めて経験することも多かったという。立ち上がりからプロジェクトに関わった長尾大介さん(現都市開発本部開発統括部企画開発2部担当部長)は「さまざまな調整に時間や回数を重ね、苦労の連続だった」と振り返る。
02年に事業協力者に選定された当時、プロジェクトの計画では敷地内に高さ200メートルの高層棟のほか、業務棟、商業棟、住宅棟の計4棟で構成されていた。ただ、4棟で囲まれた街は周辺と隔絶され、空き地も少なく閉鎖的だとの意見が出た。さらに、業務棟や商業棟は取得希望者も少なかった。このため、森ビルは4棟を1棟に集約し、超高層ビルと道路を一体的に作ることを提案した。施行者である東京都や地元地権者らと協議を重ね、2年近くをかけて全体設計を現在の形に練り上げていった。
一方、同時に進めていたテナント募集では、当初顧客からの反応が芳しくなかったという。通常、着工と合わせてテナント募集を始めるが、提案を始めたころは「新橋・虎ノ門エリアの街のイメージがわかない」との理由から、オフィスや飲食店からはあまり興味を示してもらえなかったのだ。