ホテルのテナント誘致も同様だった。営業を始めたころは「果たして虎ノ門にハイグレードのホテルの需要があるのか」「平均的なビジネスホテルで十分なのではないか」との反応が聞かれた。
ただ、そんな消極的な顧客の気持ちを覆したのは高層階からの眺めだった。提案先の担当者を虎ノ門ヒルズ近くにある高層ビルに連れていき、屋上からの風景を見せた。海に近く、空港や臨海部の高層ビルがそびえる東京の玄関口にふさわしい景色。完成したホテルからの眺めはさらに50メートル高い位置になると説明すると、多くの担当者は「これはすごいホテルになる」と興奮気味に話したという。
着工直前に東日本大震災が発生したが、森ビルは震災を教訓として災害に強いビルづくりに生かしていった。また、「より良いビル」に仕上げるために可能な限り、設計変更を重ねていった。例えば、眺めが商品力として生かせると思えば、機械室や電気室の配置も変えた。
こうした努力もあって、オフィスや住居についても、建物の形が出来上がっていくにつれて入居の引き合いが増えていった。一度は断られた提案先からも、再検討したいとの問い合わせが入るなど、完成間近のころには順調にテナントは埋まっていった。
開業から1年。虎ノ門に対する周囲からの反応は確実に変わりつつある。「白いキャンバスに絵を描くような状態だからこそ、新しい店舗を出すことに向いている」と、前向きな反応がある。森ビルの担当者たちも手応えを感じ始めた。虎ノ門ヒルズを起点にした新たな街づくりが今、本格的に動き出そうとしている。
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≪TEAM≫
東京都が2002年に新虎通りの再開発計画を決定して以来、森ビルは「事業協力者」として参加してきた。04年に入社した北尾真哉さん(現都市開発本部開発統括部企画開発2部リーダー)は一貫してこのプロジェクトに携わってきた。