ただ「ムスリムが部屋に立ち寄っても、買い物につながっているか分からない」(広報・IR室)という。階段の踊り場や試着室でお祈りを始めるムスリムが現れ、周囲に迷惑がかかってはいけないと判断して設置したからだ。しかし部屋の存在が口コミで広がり誘客効果も出てきた。
■「リピーター多い」カラオケ店自信
「買い物に行くなら新宿の高島屋。カードも作った」というのはイスラム教徒で1日5回の礼拝を欠かさない司法修習生の林純子さん。滞在時間が長くなる週末の買い物や食事は部屋を利用してから楽しむという。以前は場所を探すのに大変だったが、今はそんな心配もなくなり「本当にありがたい」と笑顔を見せる。その上で「遊園地や映画館にもほしい。行き先が決まっていなければ礼拝室があるところに行く」と言い切る。
一方、「誘客につながっている」というのは、カラオケ本舗まねきねこを運営するコシダカ(東京都港区)。昨年12月にオープンした四谷三丁目店は日本初のムスリム対応店舗。歌いに来た留学生などはまず礼拝室に足を運ぶ。母国から来た仲間を誘ってくることもあるという。ムスリム誘致のアンテナショップ的位置付けだが「ハラル食と礼拝ありきで来るリピーターも多い」と期待通りの効果に喜びを隠さない。
ただ「日本を訪れたムスリムから礼拝場所を聞かれたことはない」(訪日客向けツアー運営会社幹部)のが実情だ。訪日ムスリムの多くは「日本はイスラム教国ではないので礼拝室はない」と覚悟して来るからだが、祈りは習慣。場所があれば利用するのは間違いなく、礼拝室の確保はムスリム誘致に欠かせない。口コミで広がれば、誘客効果は大きい。佐久間氏は「新しい観光名所になれるかもしれない」とムスリム誘致の環境整備を呼びかける。(松岡健夫)