苦労の甲斐あって、「POs-Ca」は、トクホとして“初期むし歯の再結晶化”という新しい効果の表示許可を得る。田中さんらの研究は、すっかりおなじみになったデンタルガムをさらに高機能性商材に変える取り組みになった。
「歯は哺乳類で最も硬い組織。専門家の多くは結晶構造の再生は無理と考えてきたが、スプリング8で再結晶化を実証できたことで、嗜好性食品だったガムにイノベーティブな高機能を実証し、新しいトクホの開発にこぎつけた」(田中さん)
江崎グリコ健康科学研究所の研究員の半数は女性。田中さんは出産後も仕事を続ける意向だ。「女性が研究者として働くのは大変なこと。そういう環境が与えられている素晴らしい職場なので、自分の意思を持って長く続けてほしい」と後輩たちにエールを贈る。「研究していることが私の生きがいであり大切な個性であることは、夫も理解しています」とも。
研究所が生み出した商品はマスク、化粧品、スポーツ飲料と多岐にわたる。現在も「“消化管の健康”を主テーマに、口腔機能をはじめ胃腸の機能にアプローチをする、ビフィズス菌と健康の関係に関した研究も進めています」と田中さん。「世界中が高齢化社会を迎える21世紀に向け、食品で人々を健康にできる製品開発に挑み続けていきたい」と力強く宣言した。