三井化学の樹脂材料「アペル」は粒状のペレットにして供給している【拡大】
だが、添田氏は諦めなかった。設計を再度見直し、ある段階で「調味料のようなもの」(添田氏)を加えてみたところ、バランスを崩さずに済んだのだ。半ば偶然ともいえる開発成功だったが、「調味料は長年検討されてきたもので、必然でもあった」。日本企業らしい、息の長い研究開発の成果といえる。
最初の試作から半年後、仕切り直しの試作品は無事に完成した。納入先のレンズメーカーから「他社製品に切り替える」と言われていたぎりぎりのタイミングだった。
信頼関係を源泉に
新製品「APL5015AL」は、自動車用に必要な耐熱性を満足させただけでなく、耐環境性をはじめとする他の性能も確保した。14年秋には量産版も完成、車載カメラのレンズ材料に初めて採用された。
数々の苦労を強いられたが、添田氏は「顧客の厳しい要求が自分たちを鍛えてくれた」と前向きに受け止める。
「納入後に客先でトラブルがあっても解決に赴く。それだけ緊張は強いられるが、顧客との信頼関係が技術力の源泉になっている」。添田氏はそう付け加える。自動運転車用のレンズ材料の開発は始まったばかり。三井化学はさらに技術力に磨きをかけ、新市場でのシェア確保を目指す。(井田通人)