ウエアラブル端末の本命は「服」か? IoTの主役狙う繊維産業 (4/4ページ)

2015.8.14 07:07

帝人の圧電ファブリックを用いた遠隔操作の実験。肘の部分に圧電ファブリックを貼り、腕を動かすと、マネキンの腕が同じ動きをする

帝人の圧電ファブリックを用いた遠隔操作の実験。肘の部分に圧電ファブリックを貼り、腕を動かすと、マネキンの腕が同じ動きをする【拡大】

  • 「曲げ」の動きを検知するのに適している平織りの圧電ファブリック

 アップルもライバル

 今年5月には米グーグルが米リーバイ・ストラウスと組み、指でたたくと音楽を聴いたりできる「スマートジーンズ」を商品化する方針を発表。東レも着るだけで心拍数を測れる生地をNTTグループと開発し、ゴールドウインが昨年末にシャツとして商品化するなど、開発競争は業種を超えて熱を帯びる。石原事業推進班長は「アップルやグーグルは(ライバルとして)意識すべき存在」と言い切る。

 造船業とともに戦後いち早く立ち直り、外貨の稼ぎ役となって産業復興を支えた繊維産業だが、1960年代後半には早くも構造不況に直面した。価格競争で新興国勢に押される近年も停滞感はぬぐえない。帝人も昨年11月にポリエステル短繊維を製造する徳山事業所(山口県周南市)の閉鎖を含むリストラ策を打ち出すなど、構造改革に追われている。

 一方、新規事業育成を指揮する荒尾健太郎専務は、厳しい環境が「開発力を鍛え、高機能製品を生み出している面もある」と前向きだ。実際、ナイロンの一種でタイヤの補強材などに使うアラミド繊維や、軽くて強いため、航空機や自動車向けに需要が拡大している炭素繊維は稼ぎ頭に成長している。

 圧電ファブリックの事業化は早くても2、3年後で、収益への貢献度は未知数だが、こうした「種」となる技術なくして事業が「花」を咲かせることはない。石原事業推進班長は「高機能繊維の開発力では負けない。日本の底力を見せたい」と力説する。(井田通人)=おわり

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