丹波高地を抜けると、そこはのどかな京北の山村。水が良いことで知られ、太古から京都の御所の一大食料供給源となっていたと伝えられている。その道端に、裏手の畑で栽培した蕎麦を手打ちで出すという蕎麦屋を見つけたので入ってみた。通過日は30度台後半という猛暑であったが、それでもテラスで外を見ながら冷たい蕎麦を食べるのは気持ちがいいものだ。最初の一口は汁をつけずにそのままいただいてみたのだが、新蕎麦の時季ではないにもかかわらず甘味が豊かで、とても美味しく感じられた。
山陰に入ってからは鳥取砂丘を過ぎた後、ちょっと寄り道をして境港の水木ロードへ。ここは漫画家・水木しげる氏の作品に出てくるキャラクターがストリートじゅうに絵やオブジェとして飾られている名所である。到着したのが日暮れ時だったこともあって、通りは人影もほとんどない。NHKの朝の連続ドラマで水木しげる氏とその細君の物語「ゲゲゲの女房」が放映された時に注目を浴び、一躍人気スポットとなったのだが、観光客が姿を消す時間になると、厳しい過疎の現実が露になる。ただ、地方の港町のひなびた雰囲気を味わいたいといった風情派にとっては、夕暮れの時間帯はおすすめだ。近くにある中海が薄暮の紫に染まる様もとても美しい。
走行距離1327kmで初の給油
さて、東京からの走行距離はこの境港で概ね800km。燃料計は8メモリ中4メモリが残っている状態であった。そこからは山陰自動車道および国道9号線で一路、関門トンネルの通る下関へと向かう。出雲を過ぎ、太田付近を走行中、道路案内板に「下関240km」の表示が。島根に入ったら下関はもう目前という感覚でいたが、日本の広さは甘くはない。