【印刷技術最前線】国宝・平等院鳳凰堂の西扉復元 (1/4ページ)

2015.11.6 05:00

堂外保存となった扉の代わりに3年がかりで復元された新造の扉

堂外保存となった扉の代わりに3年がかりで復元された新造の扉【拡大】

  • 京都・宇治の国宝・平等院鳳凰堂
  • 平等院の神居文彰住職=京都・宇治
  • 復元プロジェクトを担当した日本アグフア・ゲバルトの岡本勝弘・マーケティング本部長兼技術副本部長
  • 下地材に胡粉を塗布し、デジタル印刷でありながら手描きの風合いを表現した
  • 独自開発の治具や、さまざまな工夫により曲面への印刷に成功した
  • 復元扉の出力を行った日本アグフア・ゲバルトのワイドフォーマットUVインクジェットプリンター「アナプルナ」

 ■UVインクジェットプリンターが威力発揮

 京都・宇治の国宝・平等院鳳凰堂。2012~14年の平成大修理で傷みの激しかった西面扉が取り外され堂外保存となった。この代わりとなる扉が3年がかりで復元され、現在はミュージアム鳳翔館で、1000年前の創建当時を思わせる華麗な姿を見せている。復元には神居文彰住職の20年来の悲願があり、多くの専門家の協力があった。そして、この「国宝再現」に日本アグフア・ゲバルトのUV(紫外線)インクジェットプリンターも大きな役割を果たした。

 鳳凰堂中堂には、2枚1組の観音開きの扉が東西南北に計12枚あり、このうち8枚は昭和の大修理ののち、復元された扉と取り替えられた。今回は残る西面の扉2枚が復元された(正面2枚は江戸期のもので現存)。西扉は鳳凰堂裏側に当たるが、古くから日常の出入り口として使われた。

 この板扉は1枚がタテ2.5メートル、ヨコ1.2メートル。周囲を枠で囲い、はすかいを入れて「軽くて丈夫なつくり」になっている。これは建築史上、比類のない構造で、平安期に現われ、その後は昭和の時代にようやく実現されたほどという。外装は全面を朱漆塗りとした壮麗さを誇り、内側には現存する最古の大和絵である「日想観図」が描かれている。

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