復元プロジェクトを担当したマーケティング本部長兼技術副本部長の岡本勝弘さんによると、大和絵の風合いを出すために、木材表面に日本画で使われる下地材の白い胡粉を使い、重ね塗りをした。これでUVインクの色の美しさも手描きの筆の感じも十分に出すことができたという。課題は、絵の周囲を縁取る押縁材の幅が5センチ以上もあって、この側面の曲面印刷が難しかったこと。しかし、これも独自開発した治具を作製、斜めにして印刷することでクリアした。
◆美と技と科学がそろう
復元された西扉は、鳳翔館で12月6日まで特別公開された後、鳳凰堂中堂に建て込まれ、「国宝の一部」を成す。
神居住職は「この扉の完成をみた瞬間、涙が止まらなかった。ここには、美と技と科学がそろっている。全て科学調査によって検証され、当代一の技術者たちによって再現された。日本の木の文化・漆芸の文化を現代にどう残すか。今回の復元は、文化財保存の今後の発展にも貢献する。モノづくりの大切さにもつながっていく」と話す。
◇
■ボード、ガラスなどにも直接印刷
日本アグフア・ゲバルトのインクジェットプリンターは、自社開発したUVインクを使用し、幅5メートルまで対応できるワイドフォーマットの産業用が主力だ。
インクの微細な粒子を直接、吹き付けて印刷する技術は、一般的な家庭用などと同じだが、UVインクの場合、搭載した紫外線装置(UVランプ)によって瞬時にインクを硬化させるため、紙以外の浸透性のないフィルムやガラス、アクリルなどにも印刷が可能。また、水平な台の上に印刷材料を置くため、厚さ5センチ以内のボード系にも対応できる。
さらに、接着力を高めるための下地処理用の塗布剤もインクジェットで直接、吹き付けることができる。