バンダイナムコグループで、ゲームソフトなどを開発するBNEのルーツの一部は、かつて「パックマン」などの世界的にヒットさせた旧ナムコにある。久保氏は、BNEでゲームセンター向けゲーム機などを手がけるAM事業部の浜野孝正氏に「こういう施設をつくっているんだけど、何かできませんか」と尋ねた。浜野氏は、映像を投影することで屋内に海を再現するという、事業部内で検討しているアイデアが使えると思い当たったが、問題もあった。通常、一つの機器を世に出すには3年程度かかるが、オープンまで残り約4カ月。「あの時点ではまだ基礎的な技術研究の段階で、本当に製品化できるかは怪しかった」と振り返る。
市場の先行きに危機感
それでも浜野氏らBNEのスタッフが、挑戦することを選んだ背景には、ゲーム機市場の先行きへの危機感があった。趣味の多様化などで市場は縮小しており、新しいアミューズメント機器を充実させていきたいという思いが強かったのだ。開発しても結局、実用化されずに終わる機器もある。それに比べると、今回は厳しい日程だが、既に上がるべき“舞台”が用意されている。浜野氏らは波や水しぶき、魚などを効果的に表現する手法を急いで練った。