第3のビールは、いかにビールの味に近づけるかというアプローチで、各社がしのぎを削っている。斎藤さんらには「ビールの味に近づけるというよりも、いろんな種類を楽しんでもらおう」という思いがあった。社内からは「そろそろ味を変えるべきなのでは」という声もあったが、今のところ方針を変えていない。
その代わりに打ち出したのは、ホワイトベルグの良さを生かしつつ、季節に応じた風味を加えるなどした派生商品の展開だった。15年4月に限定販売したゴールデンエールタイプの「ゴールドベルグ」を皮切りに、同年10月にはブラウンエールタイプの「ブラウンベルグ」と立て続けに味のバリエーションを消費者に提供した。
通常、派生商品を投入すれば、“本家”商品の売り上げが落ちるケースが少なくないが、今回のベルグシリーズでは、シェアが拡大しても、ホワイトベルグの売り上げはほとんど変わらなかった。消費者は複数のベルグシリーズを購入し、飲み比べをしたのだ。
成功に導いたのは、若者や女性の嗜好(しこう)を調べ尽くした開発陣の努力のたまものだ。中身の開発を担当した新価値開発部第1新価値開発グループの●田紀子課長代理は「ビールは春夏にはさっぱりとした味が、冬には濃い味がそれぞれ好まれる」と考えた。仕事帰りにベルギービールを飲める店に立ち寄ったり、輸入ビールを売る店に通ったりして求める味を探した。