電機業界の2016年春闘は、企業間の業績格差の拡大を受けて、交渉を主導する6社の一角の東芝が初めて離脱する異例の事態となった。中国経済の減速などで、業界全体で業績の先行き不透明感が強まっている。60年以上にわたって続いてきた、主要電機各社の労働組合が経営側から同じ水準の回答を引き出す統一交渉という手法自体が揺らぎかねない状況だ。
「大変残念ではあるが、(東芝、シャープの)両労使に社会が求めているのは一刻も早い業績回復だ。対応をお願いする」
東芝とシャープの離脱が正式に承認された電機連合の第1回中央闘争委員会で有野正治中央執行委員長は厳しい表情でこう述べた。
東芝は16年3月期に7100億円の最終赤字を計上する見通し。約1万人の人員削減に踏み切り、財務の健全性を示す自己資本比率も10%以下の“危険水域”に沈むなど経営が悪化している。こうした中、同社の労組は今春闘で「現状維持を求めていく」(幹部)考えだ。