鴻海精密工業が打ち出したシャープの再建策は、現経営陣の退陣を求めていない。
だが、高橋興三社長は就任2年目の2015年3月期連結決算で2223億円の最終赤字を計上し、今回の経営危機を招いた責任者。液晶パネルやテレビで市場動向を読み誤り、赤字を垂れ流した。16年3月期も最終赤字となる可能性が高く、株主や金融機関から責任を問う声が高まるのは必至だ。
高橋社長は今月4日の会見で進退を問われ、「構造改革を全力でやりきるのが一番の経営責任だ。(鴻海と産業革新機構の)どちらかと契約をしても単純に放り出すつもりはない」と述べ、続投の意欲を示した。
ただ、高橋社長の就任以降も液晶中心の事業構造から脱却できず、収益性のある成長事業も打ち出せていない。
高橋社長は13年6月に就任。中小型の低消費電力の液晶パネル「IGZO(イグゾー)」を量産し、中国のスマートフォンメーカーの受注を次々に獲得した。14年3月期は115億円の最終黒字に転換した。