◆笛の音で育む
江戸時代は津軽一円に酒母を売り、明治以降に酒造店に転じたが、老舗の造り酒屋にあって斬新的とも言えるのが南米発祥の縦笛「ケーナ」の音色を蔵に響かせながら仕込んでいることだ。土居社長が著名な音楽家との出会いをきっかけに、2001年から続けている。「リラックスして優しい気持ちで造らないと味わい深い酒はできない」
代表銘柄の「松緑」は、津軽藩2代目藩主・信牧公の命で造園された敷地内の庭に樹齢300~400年の老松が今も18本残っていることに由来している。「六根」は感覚や意識をつかさどる6つの器官にちなみ、心で味を感じてほしいとの思いから名付けた。さらに、事件解決のために寡黙に働く警察官に思いをはせた「刑事」という銘柄も。きっかけは昔、近くに住むお年寄りが失踪し、家に大量の血痕が残っていたことから事件性が高いと判断され連日、情報を得ようと刑事が斎藤酒造店に聞き込みに訪れた。土居社長が感じた刑事のイメージを反映してか、辛口に仕上げている。
文豪・太宰治は小説「津軽」で弘前城から霊峰・岩木山を眺望したとき、眼下に広がる弘前市内の様子をひっそりとたたずむという意味合いがある「隠沼(こもりぬ)」と表現した。
「ありのままを受け入れ、明日も頑張ろうという前向きな気持ちになる酒を造っていきたい」。太宰が表現したように、年月がたってもひっそりと変わらずに地道にあり続けることの大切さを酒造りを通して伝えていく。(福田徳行)
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【会社概要】斎藤酒造店
▽本社=青森県弘前市駒越町58 ((電)0172・34・2233、URL=www.matsumidori.co.jp)
▽創業=1904年
▽資本金=1000万円
▽事業内容=日本酒「松緑」「六根」「麗峰」「刑事」の製造、販売
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