今年2月、そのIBMに激震が走った。ワトソンの企業向け事業部門を率いるステファン・プラット氏の辞任が報じられたのだ。プラット氏は昨年10月に約2000人を擁する同部門のトップとなったばかり。辞任後の今年3月には自らの人工知能関連企業「ヌードル・Ai」を立ち上げ、IBMに反旗を翻した。
“離反”の背景にあるのは人工知能ビジネスの成長性だ。プラット氏は「人工知能の活用は今後3~5年間で各企業にとって最も重要な差別化要因となる」と市場拡大に期待する。
米調査会社IDCによると、人工知能の活用が可能なビッグデータ分析の関連市場は毎年20%超のペースで成長し、19年には世界で486億ドルに達する。この成長市場にIBMやグーグル、マイクロソフト、アマゾンなど大手のほか、新興企業も競争に加わり、群雄割拠の様相を呈している。
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「米国企業が年間1兆円を超える巨額の研究開発費を投じて覇権を争っているのに対し、日本は出遅れた第2グループの中団だ」
人工知能学会の松原仁会長はこう解説する。先頭を走る米国の背中は遠く、後ろでは第3グループの韓国や中国がひたひたと追い上げている状況だ。
危機感を抱いた日本政府は今年4月、研究開発の司令塔となる「人工知能技術戦略会議」をようやく創設した。「非常に厳しい状況の解決は喫緊の課題。産官学一体で実のある研究に取り組む」。初会合で議長の安西祐一郎日本学術振興会理事長はこう決意を語ったが、その展望はまだ見えない。