「人間は、人工知能に運転を任せていて、車内でリラックスしているときに、突然、運転しろと要求されても、そもそも対応できない」とテラー氏。「だから、私たちは、ハンドルのない、完全自動運転車をつくったのだ」。
テラー氏の発言は、技術目標というものを、どのように見定めるかという点に関する、深い叡智を示しているように思う。
中途半端な自動運転車をつくっても、役に立たなければ意味がない。なによりも、ユーザーに、認知上、行動上の、実際的ではない負荷をかけてはならない。
テラー氏の言うように、「完全自動運転車」以外は、ユーザー側にとっては使いにくい、安全ではない乗り物になってしまうだろう。そのような「本質」を一気に見抜いた「ムーンショット」の「キャプテン」の眼力にしびれた。
技術課題の本質を見極めなければ、大胆な研究はできない。未来に関心を持つすべての人が心に留めるべきだろう。
(茂木 健一郎 写真=AFLO)(PRESIDENT Online)