
フォードが誇る伝統のスポーツカー「マスタング」(写真:フォード・ジャパン)【拡大】
日本での販売は低迷
しかし、日本での販売は低迷を続けた。SUV(スポーツ用多目的車)ブームだった1996年に過去最高の2万244台を販売したものの、ここ数年は5000台以下。日本自動車輸入組合によると、昨年のフォードの乗用車の販売台数は4856台で、外国メーカー車に占めるシェアは1・7%にとどまった。
ただ、これはフォードだけではなく、アメリカブランド全体の問題でもある。輸入車市場ではメルセデス・ベンツとフォルクスワーゲン(VW)、BMWのドイツ勢がそれぞれ10%以上のシェアでトップ3を独占。米国ブランドは、好調なクライスラー「ジープ」が2%程度、GM「キャデラック」は年間販売1000台を下回る。フォード・ブランドの苦戦は“アメ車”の低迷をそのまま反映している。
自動車専門誌「NAVI CARS」の河西啓介編集長は、「クルマに関して、日本人はヨーロッパひいき。アメリカ車のイメージで販売を伸ばすのは難しい」と指摘する。
半分は「中身がドイツ車」
しかし河西編集長は、「実はフォード車の半分は、中身がドイツ車」と明かす。グローバルメーカーのフォードでは、開発・生産部門がアメリカと、ドイツを中心とする欧州に分かれ、それぞれ消費地に適した車種を開発・生産しているのだ。
アメリカの広大な大地を疾走する大型スポーツカーやSUVは、祖国アメリカで開発。小型のファミリーカーなどはドイツを中心に開発する。こうして、欧州やアジアの細く入り組んだ道を走るのに適し、燃費もよく経済的な小型車をヨーロッパから世界へ送り出してきた。
今年、日本で販売されている6モデルのうち、コンパクトカー「フィエスタ」、ミドルクラスの「フォーカス」、コンパクトSUV「エコスポーツ」、ミドルSUV「クーガ」の計4モデルが欧州フォード製。生粋の米国製は、スポーツカー「マスタング」と大型SUV「エクスプローラー」の2モデルしかない。