五輪特需の期間中、海外の受注競争で日本勢の存在感が薄くなる中で、新興国勢が技術力をつけて競争力を強めるのは確実で、特需後に日本勢が競争に再参入できるのかをいぶかる向きもある。
官民あげて取り組む高速鉄道でもJRグループの人材不足を懸念する声が大きい。日本と中国が受注を競ってきたインドネシアの高速鉄道計画は、二転三転の末の15年9月に中国の採用が決まった。日本は中国に競り負けたとされ、インフラ輸出失敗の代表例とみられている。ただ、民間企業はそもそも同計画の採算性に疑問を投げかけていた。また、受注が取り沙汰されたインドの案件をにらみ、インドネシアとインドの両方にJRの技術者を投入するのは難しいのではないかと不安視する声も上がっていた。高速鉄道はタイやシンガポール~マレーシアなど計画がめじろ押しで「優先順位をつけて選別しないと、技術力が追いつかない」のが実態なのだ。
政府は今年5月、質の高いインフラ輸出の対象国をアジアから全世界に広げた。ロシアやアフリカなどが念頭にあるとみられる。JBIC(国際協力銀行)のリスクマネー供給やNEXI(日本貿易保険)の機能強化、JICA(国際協力機構)の海外投融資の柔軟な運用・見直しも図り、受注に向けた金融支援の道具建てはかなり整ったといえる。だが、今後、海外の受注競争を勝ち抜けるかは、長期の視点でグローバルに活躍できる技術者をどれだけ育成できるかにかかっている。(上原すみ子)