
シャープの戴正呉社長=8月、堺市堺区(寺口純平撮影)【拡大】
戴社長が就任した8月13日から約2カ月半。組織変更や設備投資関連の発表、報道内容に関するコメントまで、東証への適時開示案件は約20件に上った。プレスリリースを含めるとほぼ毎日のように発表案件がある状態だ。側近の社長室は“激動”のときを迎えている。
戴社長は毎朝7時ごろ始動する。7時半からの会議も珍しくない鴻海で身についた習慣で、1日16時間働くとされる郭台銘会長よりも早く出勤するため17時間働くとも言われている。
シャープ取締役から、社長室長となった橋本仁宏氏は「戴社長は会社のカルチャーを変えようとしている」と受け止めている。
後戻りはできない
ビル買い戻しが注目を集めたが、メッセージの最後には、新たなコーポレート・スローガン「Be Original」も盛り込まれていた。「目指してる、未来がちがう」に代わるものだ。
シャープは日本語訳をつけていないが、「独創的であれ」といったところだろうか。戴社長はメッセージで「シャープらしいオリジナリティーあふれる価値を実現していくことを約束する言葉」と説明する。
鴻海傘下入りが決まる前の今年1月からスローガンを練っていたブランディングデザイン本部の大矢隆一本部長は「ブランド価値を高めるのには、10年くらいかかる。後戻りはできない」と話す。
10月に千葉市で開かれたIT展示会「CEATEC JAPAN(シーテック・ジャパン)2016」では、赤い「SHARP」のロゴと白い「Be Original」の2つの看板を掲げた。そして、最新家電や8Kテレビを並べたブースの片隅に、液晶電卓などシャープが世界で初めて開発した製品の数々を展示した。
ある幹部は「かつて『目の付けどころがシャープでしょ。』と世界初にこだわったシャープを取り戻そうということ」と受け止める。新スローガンとともに再び世界競争に挑むことになる。