
日本通信の福田尚久社長【拡大】
日本通信はなぜ激怒しているのか。
現在、NTTドコモの端末利用者は端末購入後、約1万円の契約解除料を支払えば、すぐにでもドコモ回線を使ったMVNOの格安SIMカードを使って、ドコモより安い通信料でスマホを利用できる。これは、ほぼ全ての格安スマホ事業者のSIMカードが、NTTドコモの回線を使ったものに限定されているためだが、日本通信はこのせいで「ドコモ利用者以外がMVNOに移る選択肢を奪われている」と主張。ソフトバンクの回線を使った格安SIMカードが広く利用できるようになれば、「携帯電話契約者全体でMVNOの占めるシェアは倍になる」との見通しを示す。
ソフトバンクから回線を借りようとしたのは、ソフトバンク利用者が容易にMVNOに移れる環境を整えるためというわけだ。
ロック短縮を検討
ところが、ソフトバンクは、ドコモと違い、端末購入から180日経過してSIMロックを解除した端末のみが接続できるようにして、日本通信に回線を貸し出そうとした。ソフトバンクは自社で格安スマホブランドのワイモバイルを運営しており、「『ソフトバンクの回線を使った格安料金のスマホは、ワイモバイルを使ってほしい』との思惑もあって、端末を限定した回線貸し出しを日本通信に申し出た」という見方も業界内に広がっている。
三田会長は「ドコモと同じにしてもらいたいだけだ」と主張。福田社長は「3、4カ月ぐらいで総務省には判断してほしい」と早期決着に期待をかけている。
折しも、日本通信の申し立ての1週間後、総務省は、MVNOが大手から回線を借りる接続料の値下げなど、MVNOをさらに普及させるための有識者会合を開始した。「日本通信は、こうしたタイミングを見計らった上でソフトバンクとの対立を表面化させた」との見方もあるが、総務省の方針に合わせて、ソフトバンクは早速、会合の中で日本通信の意向に配慮する姿勢を見せ始めた。