
インタビューに応じる富士フイルムHDの古森重隆会長兼CEO=11月29日、東京都港区【拡大】
「一時期ほどの勝ち方ではなくなった1つの要因は通貨だ。円は115円ぐらいがフェアレートだが、この1年間は円高でたたきのめされた。われわれの海外売上高比率は60%強だが、海外で造って海外で売っても日本企業の決算発表は円建てだ。ドル建てなら当社は増益だ。日本経済が駄目なわけではない。世界はもっと悪い」
--米大統領選でのトランプ氏の勝利で円安が進行し、為替は一息ついた
「トランプ氏勝利の背景は製造業の衰退だ。米国が海外へ工場を移して米国人が職を失った。白人の中流階級が職業基盤を失っているのが状況だ」
将来への投資不可欠
--米国の轍(てつ)を踏まないためにどうすればよいか
「コモディティー(普及商品)の勝負ではかなわない。技術を生かした先端的で優秀な商品で勝負するしかない。技術力の蓄積があるし、その力はある。『ROE(株主資本利益率)経営』とよく言われるが、ROEを上げるには自己資本を減らすことだ。自己資本を減らすためには自社株買いや配当を払う。それは短期的に株を持つ人には良いかもしれない。だが、長期的な経営のためには、基礎技術や基盤技術を高め、将来に向けて投資しなければならない」(芳賀由明)