
乃村工藝社が高山陣屋で行ったプロジェクションマッピングの再現。最先端のディスプレイ技術で地域資源活性化を狙う【拡大】
セミナーには、京都府企画理事として「お茶の京都」事業を担当する本田一泰氏も出席。地域が自分たちで観光資源を見つけ出し、アピールして訪問客を招こうとする“内発と自走”の姿勢を訴えた。「地方自治体は人口が減って元気なくなっているのに、行政が何かやってくれる、大手企業が何かやってくれるといった外部資源だよりになる」。それでは、地域の良さが本当に生かされた観光資源の活性化は難しい。「自分たちの町をどうするかは自分たちで決める」。そうした意識を持ってもらいながら、京都府では「お茶の京都」という共通のフラッグを立て、宇治茶のプレミアム化などを通して産業の振興、観光の誘致などを進めていこうとしている。
乃村工藝社が観光資源の活用などを通じた地域の活性化で、地元自治体と提携したのが宮崎県日南市。森林が多く人口の減少や高齢化世帯の増加に悩んでいるが、宮崎県職員を経て2013年に当選した崎田恭平市長のもと、シャッター街と化していた商店街のリニューアルを成功させ、城下町として栄え古い家屋が残る飫肥(おび)地区でも、古民家を改装して観光客が立ち寄りたくなるような街に変えようと動き始めている。
乃村工藝社ではそうした飫肥の城下町で、文化的な建築をどう利用すれば若い人たちも含めた観光客に楽しんでもらえるかを提案していく。飫肥城の石段で行われる踊りのバックをライティングによって彩ったり、伝統文化を体験できるプログラムを提案したりと、これまでの事業で培ったプロデュース力をそこに注いでいく。1月28日に日南市で行われた調印式でも、バックパネルを使い終わったら捨てられるだけの紙ではなく、手ぬぐいで飾って式のあとに配布した。こうした発想を各所で発揮して、飫肥城下町を古都でありながらも最先端の観光地として見てもらえるように変えていく。
丹青社も、観光客の誘致に繋がるプロジェクトへの関わりを増やしている。そのひとつに、地域の歴史遺産に対する関心を再確認させるようなミュージアムの構築がある。20年に1度、伊勢神宮で行われる式年遷宮に合わせ、外宮のそばに「式年遷宮記念せんぐう館」を企画。社殿や儀式のジオラマやなどを通して、式年遷宮を体感できるような雰囲気を作り上げた。
丹青社の招きで講演した、北海道大学観光学高等研究センター長の西山徳明教授は、世界遺産ならぬ“市民遺産”を定着させていく必要を訴えた。世界遺産に認められると、国などの支援もあって盛り上がる一方で、地域が関わりづらくなる状況も生じる。一時のブームが過ぎた後、地元の盛り上がりを欠く中で衰退を呼んでしまうことも起こりえる。