
会見する東芝の綱川智社長(右)と佐藤良二監査委員会委員長=14日午後、東京都港区(古厩正樹撮影)【拡大】
東芝が巨額損失を出すことになったのは、WHがS&Wを買収したためだ。WHは、20年にS&Wなどと米国で原発4基を受注したが、米政府の安全規制強化で人件費などのコストが膨らみ、電力会社やS&Wの親会社である米CB&Iと負担をめぐりトラブルになった。
そこでWHは、係争相手からS&Wを買収し、トラブルを解消してこれ以上の損失拡大を食い止めようとした。ところが、コストはさらに増加。S&Wの価値は買収時の想定を大幅に下回り、巨額の損失が避けられなくなった。
佐藤委員長は「現時点では(不正が)財務諸表に修正を加える事項は認識していない」と語るが、「不適切なプレッシャー」が買収前と買収後のS&Wの査定額の違いに影響したとすれば、7千億円強と見積もっている損失額にも影響する可能性がある。
東芝経営陣のWHに対するガバナンス(統治)の不備も問われる。東芝は事業ごとの「縦割り」意識が強いといわれてきた。原発事業は、原発畑を一貫して歩んだ志賀重範会長と、ロデリックWH会長の2人に任せ切りとなっていた。
綱川智社長は昨年6月の就任時に「企業体質の変革」を約束したが、東芝と取引のある大手金融機関の融資担当者は「内部統制の改革はしょせん飾りだったんだな」と吐き捨てた。(井田通人)